【詐欺師を潰した話】第七章:情報拡散、インターネットを使った活動【投資必勝法DVD】

①正義の味方ごっこ

第六章:脱洗脳の連鎖、組織壊滅へ からの続き

2011.6.1
リアルでの活動がひと段落したので、
行政処分に向けた新たな爆弾を仕掛けるため、インターネットに移行。

手始めに、2ちゃんねる等に匿名で事実を書き込み。
私が勧誘を受けた時、インターネット上に情報がなかったことが一番の苦悩だったため、
気づける人が増えるように、特定はされないよう配慮し、ネット上に形として残した。

結果、大きな反響があり、コピペで拡散され、この文章が検索エンジンで上位にヒットするようになった。作戦は大成功。
この辺りから、他の被害者によるネット上の投稿・悪評も散見されるようになり、多方面からの十分な情報が揃ったため、誰の目にも明らかに『悪徳組織』として映るような状況となった。

以下、2ちゃんねるでの投稿事例。

自分も投資詐欺・マルチ商法のWARRENの勧誘を受けました。被害拡大防止の為、詳しく書きます。 

まず友人から電話があり、「凄い人に会わせたい」と言われる。周りに言ったら皆に羨ましがられるからと口止めされる。最初に空いてる日程を聞かれ、その日は必ず空けておくように言われる。目的は絶対に教えてくれない。 
当日、凄い人と友人と3人で話す。その後、同い年の成功者2人に会わされて、1日中付きまとわれる。 


本題の投資詐欺の話はこんな感じだった↓ 
・日本一の投資家である○井さんが作った必勝投資DVD「システム」が56万円。実物はアリジェンス開発室で作られた、「究極のシステム売買 アリジェンス」という名前のDVD。 
・友人が紹介料で10万円をだまし取ろうとしている事実は告げてくれない。後で問い詰めても、マルチ商法ではなく訪問販売だという。 
・200枚限定。選ばれた若者しかこの組織には入れない。その選ばれた若者達が一生のビジネスパートナーとなり、すぐに年収1000万は軽く越えるようになる。 
・タメになる勉強会、多数の有名人に会えるクラブパーティー、高級車を貸し切ったクルージングパーティー、その他豪華なイベントへの参加が出来る。 
・皆学生ローンで60万円を借りて入会しているから、借りて入会すべき。借金の元なんかすぐに取れる。 
・「この環境に入れば俺みたいに学生のうちから金持ちになれるよ」by同い年の成功者。 
・自分の勧誘の時はWARRENの名前だけで、SUNRISEやACEやGRACEという名前は出てこなかった。 
…結局、日本一の投資家だというシステム開発者の本名をググっても全くヒットしないし、限定200というのは確実に嘘だし、何より勧誘で10万円をだまし取ろうとしていることを言わないって酷過ぎる… 
しかも投資DVDを使っても負けてしまうため、DVDを使っている人は居ない模様。 
嘘まみれの最悪な組織です。 


友人とはそれ以来絶縁し、距離を置いてるんですが、今では噂が回って友達が一人も居なくなってしまったようです。 
余りにもかわいそうなので、これから友人を消費者センターに連れていこうかと考えてます。 


大学2年生~3年生の人が狙われてるから、56万円の投資用DVDを使ったマルチ商法には注意して下さい。 

2011.6.9
あらゆる検索エンジンで「投資 56万円」と検索をする癖は治らない。

その癖が生き、Yahoo知恵袋にて勧誘を受けた被害者が助けを求めているのをリアルタイムで発見。
同じような内容の質問を連投しており、相当焦っていることが分かった。

即、救済用のYahooアカウントを作成し、質問に回答。
質問リクエストからメールアドレス交換をし、数日にわたって情報提供。

「友人が組織にハマっていて困っている」「直接会って話がしたい」ということなので、快諾。
6.15の夜、情報提供をすることに。

相談者の知恵袋の過去の質問を見る限り、組織のまわし者ではない事は明らかだったため、
会うことへの不安はなかった。

また、詳細を聞き出すと、WARRENではなくSUNRISEの勧誘であるということも分かった。
別組織の情報も手に入れたい気持ちもあった。

2011.6.15
16:30~19:30
東京にて相談者と話し合い。

初めて説得に向かう時の恐怖、説得に失敗してしまったら親友を失ってしまうという不安が痛いほど分かる。
藁にもすがる気持ちで、組織の内情を詳しく知る人間に頼りたくなる気持ちも良く分かる。

依頼を受け、翌々日の説得に立ち会う事に。

2011.6.17
16:30~23:00
この日は佐々木も呼び、相談者の説得の手伝い。

あまり洗脳されておらず、あっけなく説得は成功。SUNRISEの内部情報について色々と聞き出す。

代表の名前が違うだけで、販売しているDVDも、活動内容もWARRENと全て一緒だった。

子会員も1人いるため、すぐに説明したいということで、すぐ呼んでもらう事に。
こちらも説明しただけで納得していただいた。

被害者は2人揃って、2日後に管轄の区の消費者センターへ行くことに決まった。

あまり介入しすぎると、また膨大な時間を使ってしまうので、あとのことは任せる事に。

随時報告をしてもらって、メール等でのサポートはしていく。
SUNRISEでもWARREN同様に説得の連鎖が起こるよう、祈った。

インターネットを使い、困っている人と繋がり、2人の被害者を退会させることができた。

今後も学業の傍ら、可能な範囲でこのように地道に活動し、
被害報告件数を増やしていくことが行政処分に向けた最も有意義な手段となると考えた。

佐々木、湯川にはWARRENのことは忘れて就活に専念してもらい、
これからは一人で活動していく事にした。

インターネットの力は絶大である

2011.6.19
夕方、先日のSUNRISEの相談者から電話。
親会員の説得にも成功したという。

「この後、さらに上位会員の説得にあたっていいか」と聞かれ、
「まずは3人の退会と返金要求のことを優先すべき」とアドバイス。

以降、疎遠となり、その後の退会の連鎖が起こったかは不明。

2011.6.28
夜、佐々木から電話。

子会員の返金要求が半額(28万円)通ったとのこと。

佐々木の返金要求は通らなかったため、初めての返金だった。

これ以降、WARRENから報酬を受けていない人間に対しては28万円が返金されることとなる。
少しでも報酬を受けている人間には1円も返金されることはなかった。

2011.7.21
マイクロシステムテクノロジー社のような処分を望んでいたため、
国民生活センターのHPを毎日チェックしていた。

そして、WARRENについての注意喚起報道が出たことに即日気付いた。

2011年度1−3月および4−6月の件数急増は、
私たちのこれまでの活動の成果であると考えた。

直近の被害件数の急増が自分たちの成果として目に映り、
このような報道に寄与できた達成感に満ち溢れた。

即、佐々木に連絡し、ここまで来た喜びを分かち合う。

この時点でのWARRENの被害報告件数が123件であり、
マイクロシステムテクノロジー社が過去に157件で行政処分に至ったため、処分は時間の問題であると考えた。

この国民生活センターの報道資料は大きな自信につながった。
これまでの活動の成果を形に残すことができたことが嬉しかった。

何よりも、このような公式な報道資料が今後もインターネット上にあり続けるという事実が心強く、これから騙される人はますます減るであろうと考えた。

以降、マイクロシステムテクノロジー社と上記WARRENの報道資料は説得の際に必ず持参した。

この2つを並べることで『行政処分までのカウントダウンは始まっている』ことは誰の目にも明らかであるため、重宝することとなる。

効果覿面であった。

2011.8.5
インターネット上に書き込んでいた捨てアドレスにメールが届く。

返信をしつつ、メールアドレスの文字列を検索にかけてみると、
知恵袋で同一人物とみられる女性の質問があった。

知恵袋でも回答し、メールにて同一人物と確認をとり、情報提供。
彼氏がWARRENの被害者であるということが分かった。

2011.8.14
14:00~19:45
東京にて話し合い。翌日に説得を行うということで立ち会うことに。

2011.8.15
相談者の彼氏の説得。すんなり上手くいった。
最近のWARRENの情報を聞き出す。

ターゲットは私たちの一個下の世代に移り変わっており、今後も永遠と20-21歳を狙っていくことは明らかであった。

この足で消費者センターに向かうことになり、市の消費者センターへ移動し、相談に同席。
被害者はこれから通知書を作成するということで、あとの事は任せることとなった。

2011.10.9
新しい手段として、Twitterアカウントを作成。
敬意を示し、「warren stupid」の逆の文字列にした。

『@diputsnerraw:日本には56万円の投資用DVDを売りつける悪徳業者が存在するらしい。勧誘に成功すると10万円のマージンが貰える後出しマルチ商法。被害に遭われた方、勧誘を受けた方は消費者センターへ。』
※行政処分後に自己紹介文は変更している。

情報を欲し、「投資 56万」で検索をした人たちがこのアカウントにたどり着き、
自己紹介文を見た人が少しでも消費者センターへ足を運べるようにした。

このTwitterアカウントにより情報発信をしつつ、DMによる個別の情報提供を進めていった。
また、diputsnerrawを敵として、手遅れな内部者を団結・鼓舞させ、レベルの低い勧誘を活性化させる事により、組織の悪評を増やせれば良いとも考えた。

この時にはインターネット上の悪評により、間違いなく勧誘成功率はグンと下がり、騙される人も減っていた。

また、定期的にTwitterで「投資 56万」のキーワード検索をし、
困っている方を見つけるたびにフォローし、リフォローがあればDMにて情報提供を行い続けた。

学業が忙しく、直接説得に出向くのは限られてしまったが、
インターネットを介して私が直接説得現場に出向き、退会させた被害者は最終的に20人となった。

のちに行政処分される4組織、全ての説得に携わり、全ての組織の内部情報を手に入れた。

私が出向く説得現場では、
毎回それぞれ違う、リアルな人間ドラマが繰り広げられ、
まさに他者の人生を変える活動であった。

たった1日で、
初めて会う犯罪者予備軍の被害者を、真っ当な道に戻していく。

自己満足な『正義の味方ごっこ』であったが、
相談者からは物凄く感謝され、心が満たされるため、生きがいであった。

2010.9.26の勧誘を受けたばかりの私も、
このような正義の味方が居たら、同じように頼り、存在に感謝したであろう。
常に初心を忘れずに行動した。

この活動以上に、
ドーパミン・β−エンドルフィンなどの脳内麻薬が出る経験を、私は知らない。

社会人になってからも様々な仕事をこなしたが、他者or社会に貢献できていると実感できる仕事は少ない。
この時は手に取るように感じることができ、強烈に『生きている実感』があった。

ドーパミン

予定が合わず、直接出向くことができない場合はメールで詳細に情報提供し、相談に乗り、
消費者センターへ促していた。
メールだけの情報提供・サポートは最終的に50件を超えた。

少しずつではあるが、被害報告件数は着実に積み上がっている。
私の見えないところでも、どこかで確実に説得の連鎖が進んでいる。

行政処分までの道のりは思っていたよりも長いが、時間の問題であると考えていた。

正直、この充実した日々が終わるのは名残惜しいと思った。

第八章:行政・報道機関への情報提供、祝・行政処分 へ続く

静岡県駿東郡清水町

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