第四章:被洗脳者の目、脱洗脳の苦悩 からの続き
2011.3.2
10:00頃、佐々木宅に電話。
終日、佐々木の兄弟しか家に居ない模様。
2011.3.3
8:30頃、佐々木宅に電話。
お母さんが出て、「あの子は大丈夫らしいから、あまり心配しないで大丈夫だよ」と言われる。
佐々木に先手を取られ、両親への徹底的な根回しをされた事を知り、私も徹底的に言い付けてやろうと決める。
14時からならお父さんもお母さんも在宅という事で、14時に伺うことにした。
佐々木ではなく私がおかしい人に思われていそうで、少し不安だった。
それまでの時間に改めて情報収集。
埼玉県、居住している県、居住している市の消費者センターに電話。
そのうち市の消費者センターのみが親身になって話を聞いてくれて、
直接話をしたくなり、すぐ行くことにした。
12時頃~13時半頃
市の消費者センターへ。
過去に行政処分を受けた悪徳業者の資料をもらったりする。
しかし、やはり類似した事例はなく、新規性が高く非常に厄介なものであると知る。
後日、佐々木や佐々木の両親が来るかもしれないことを伝える。
14時~19時頃、佐々木宅で話し合い。
すんなり理解いただき、感謝の言葉をいただいた。お母さんは涙を流していた。
「これまで頑張ってきて、見捨てないで良かった」と心から思った。
良識のある両親・兄弟で、安心した。
みんなで協力し、佐々木を全力で改心させてくれるということで、
旅行から帰ったら即行で佐々木を叱ってくれることに。
これで佐々木は完全に辞める事になると思うと、今までの努力が全て報われた気がした。
何か進展があれば佐々木父から連絡をもらうことに。
2011.3.7
佐々木父からメール有。
9日の午前から佐々木とともに消費者センターへ行くとのこと。とりあえず安堵した。
2011.3.10
佐々木父からメール有。
9日に佐々木と一緒に消費者センターへ行ってきたとのこと。
佐々木は午前も午後も行ってきたという事で、洗脳が解けつつあるのではないかと期待した。
2011.3.13
佐々木本人からメール。
「申し訳なかった。完全におかしな思考になっていた。俺が悪かった。犯罪の道から救ってくれて本当にありがとう。入会してしまった3人も一緒に辞めることとなった。今後は誠意を持って行動するから、これからも友達でいてほしい。」
謝罪と反省の長文メールで、完全に洗脳が解けた模様。
やれるべき事は全てやって、洗脳は必ず解けると信じていたが、
結果にあらわれたことがめちゃくちゃ嬉しく、泣いた。
2011.3.15
佐々木本人からメール有。
色々話したいとのこと。もちろん快諾。
24:00~家で佐々木と話し合い。
完全に洗脳から解けており、昔の佐々木だった。
わざとらしく土下座をしてくる。久しぶりに、心から笑った。
色々と内部情報を教えてもらう。
佐々木はこれまでに3人を入会させ、10万円×3=30万円、
さらに勧誘を頑張った成果で、Bトレと呼ばれる立場に昇格し、昇格祝いで10万円、
組織から合計40万円を受け取ってしまっていることを教えてくれた。
下記情報(青字)を手に入れる。
セミナーでとったノートも全て見せてもらう。
・啓太は3代目代表。立ち上げたのは別の人間。
・セミナーやパーティーは実際に行われている。勉強しながら投資をするのも本当。
・投資の4つのシステムについて、CME、HY、DTLは佐々木も使っているが、正直なところ成果はプラマイゼロで、支給された紹介料は使ってしまったので借金も満額残ったまま。
勧誘時に見せられたパフォーマンスと実際の運用結果は程遠い。
今は成果は出ていないが、最後の砦としてFKが残されていたため希望を持っていた。
なお、FKは超難解であるため、身近でやっている人は見かけたことがない。
・クーリングオフ期間が終わってから、紹介料10万円の話を『おまけ』として聞き、すんなりと受け入れてしまった。
・勧誘マニュアルは厳密に決められており、電話の段階から言う言葉が決められている。
また、相手が一人で居ない場合はNGで、必ず相手が一人で居る時に話を始めるというルールもあった。
電話の横には必ず上位会員がいて、発言にミスがないかチェックしている。
・勧誘ノルマはないが、投資に勝てないため、手っ取り早く10万円稼げる勧誘に走ってしまう。
・勧誘当日は必ず一人で呼び出し、事前に仕組まれた内部者で囲み、たらい回しにする。
できる限りその日のうちに契約を取るよう強く言われていた。
・Bトレに昇格するには『投資の成績』ではなく、『勧誘の成果』であり、3人勧誘に成功することで達成できた。
・さらに勧誘を頑張れば、Bトレから昇格すればAトレとなり、セミナーの講師などを務める。
田中、田代、金田は今すぐにでもAトレに上がりそうな雰囲気であった。
・田代の子会員は6人、金田の子会員は5人、田中の子会員は9人と、序盤の勢いはなくなり、勧誘の成功は頭打ちになっている。
・湯川は2人勧誘に成功しているが、セミナーにはあまり来ていない。
・セミナーは、①講義→②受講者の決意表明→③アフターの構成で、詳細は下記の通り。
①講義:Aトレの会員が講師となり、経営や投資の知識を伝える。教えるのが素人なので、レベルは低い。表面上はメインであるが、実際はただのおまけ。
②受講者の決意表明:全員ではないが、志願者がみんなの前に立ち、短期・中期・長期の目標を大声で宣言する。長期目標は『夢リスト』として頻繁に作成を行なっていた。勧誘の目標は必ず設定するため、表明される内容は、『勧誘』>『投資』であったという。
③アフター:勧誘の電話タイム。各々が勧誘目標に沿い、上位会員とロールプレイしながら実施する。人脈整理として、友達の中から確実に入りそうな人を選定するため、友人の格付けをし、上位から順番に勧誘をしていく。表面上はおまけであるが、実際はメイン。
この組織の肝は、『投資』ではなく『勧誘』であることが明確であった。
また、勧誘行為への罪悪感は一切なく、佐々木は完全なる善意で活動をしていたという。
この時点での組織図は下記のとおり。
佐々木はこれから消費者センターへ通い、色々考えてから行動していくとのこと。
まずは佐々木と子会員3人の①組織との絶縁、②返金要求を行うことが重要であると話し合った。
とにかく、悪徳業者との絶縁の意思表示を証拠として残しておかなければ、『犯罪者』としてみなされる可能性があるため、その行動が最優先であった。
残念ながら、クーリングオフが効く人は居なかった。
また、佐々木は子会員に対する責任として、
組織から得た紹介料10万円を3人に渡して謝罪し、それぞれに納得してもらったとのこと。
素晴らしい行動だと思った。
佐々木も洗脳から目覚め、
現代表である啓太を社会的に抹殺させることを2人の目標とする。
大元は1代目の代表であるが、
私も顔を知っている啓太を共通の敵と定めた。
見える敵であれば、モチベーションが湧きやすい。
佐々木は潜入捜査などの危ない行動も考えていると言っていたので、
「退会する以上、これ以上WARRENに関わることは辞めたほうが良い」
「まずは自分の問題を優先しよう」
と忠告。
翌8時解散。
部外者があまりしゃしゃり出るのは良くないと思い、
これからは佐々木の考えに任せ、しばらくそっと見守って佐々木からの連絡を待つことにした。
2011.4.1
色々と調べる中、後出しマルチで行政処分を受けたマイクロシステムテクノロジー社の情報を入手。もう少し早く手に入れたかったと悔やんだ。
ここで一度、法律について深く学んだ。佐々木にも共有。
※現在、HP上では削除されており確認できず。下記写真の内容。
マイクロシステムテクノロジー社のように被害報告件数を稼ぎ、
行政処分に持っていくのが現実的なゴールだと考え、
消費者センターへの被害報告を積むために、
被害者にはもれなく所在地の消費者センターへ行くことを促すこととした。
2011.4.9
やっと佐々木から連絡。
正直、途中経過くらい連絡しろよと思っていた。今夜話し合う事に。
22:00~家で佐々木と話し合い。
遅くなってしまった理由を聞くと、
一か月ほど消費者センターに通い、組織に送付する通知書(絶縁及び返金を求める文書)を作成していたとのこと。
この通知書を内容証明郵便で送ることで、『私と組織との関係はない』という絶縁の証拠を残すことができ、返金も認められる可能性があるらしい。
子会員3人の分も一緒に作成しており、
佐々木の分はほぼ完成し、あとは送るだけだというので、見せてもらう。
勧誘から入会後までのことを事細かく記した書類だったため、
過去の過ちに目を向けることは非常に億劫で、気の進まぬ作業に時間がかかってしまったという。
行動力が取り柄である佐々木が、ここまでスローペースになってしまうとは驚きであった。
ペースは遅くても、泣き寝入りせずしっかり行動し、子会員の責任も全うしている佐々木は凄い。
さらに、電話勧誘をしてしまった友人全てに謝罪を済ませたという。
このような後出しマルチでは、電話勧誘を行っただけの友人に対しても『怪しい』『関わらない方が良さそう』と不信感を与え、その後の友情に大きなヒビが入ってしまう。
このような謝罪を行うのも非常に億劫だと思うが、全ての友人に誠意を持って対応できた佐々木を誇らしく思った。
なお、謝罪をしても1名だけ、許してもらえずに音信不通になってしまったとのこと。
やはり、このような勧誘は行うべきでない。
合法であるマルチ商法の勧誘でも同様である。
また、
数日前に田中と田代が自宅まで取り立て(佐々木が受けた40万円の返金要求)に来た事を知る。
許せない。この時は田中と田代への憎しみが半端なかった。
佐々木曰く、湯川ならまだ説得が出来そうだという事なので、
私の方から湯川への圧力をかけていく事に。
佐々木にはまず自分の問題に専念してもらって、それと平行して湯川への説得への準備をしようとこの時は思っていた。
翌9:00解散。
2011.4.10
20:00頃、湯川への説得の準備として、
湯川と同じバイトをしている旧友2人へ軽い情報提供のメールをする。
すると、間髪入れずに電話がかかってくる。
今、ちょうど2人で一緒に居て、その話をしていたという。
「今すぐ詳しい話が聞きたいから家まで行く」という事で、家で詳しく情報提供。
2人とも信じられない様子で、大きなショックを受けている。
そして、2人に「どうしても今すぐに湯川を説得しに行きたい」と言われる。
内心凄く焦る。
あれだけの準備をして佐々木の説得にやっと成功したばかりなのに、
こんなにも唐突では上手くいく訳がないと思えた。
だが、2人の目を見ると本気で、『絶対に説得出来る』という自信が伝わってきたので、
唐突であったが説得に行く事に決めた。
佐々木にメール。
湯川が金田の勧誘によりWARRENに入っていて、
自身も勧誘し、2人の子会員が居るという事実を再度確認。
今から説得に向かうという事も伝え、3人で湯川宅へと向かう。
21時頃、湯川宅へ。
湯川が家から出てくる。私たちの姿を見て驚いていた。
埼玉県のHPを見せる。
「あ~、これ金田に勧誘されたけど断ったわ」と湯川。
最初は全く認めてくれなかった。
しかし、湯川が分かりやすく慌ててくれたから助かった。
湯川は私に向かって煙草の煙を思いっきり吹き掛けてきたりしてきて、この時は相当恨まれているなと感じた。
申し訳ないと思いつつ、諭す形で証拠を突き付け攻めていき、
湯川と仲の良い2人の友人からも熱い説得があり、やっと事実を認めてくれた。
30分くらいかかった。
でも「勧誘はしていない」という嘘を貫き、そこは折れなかった。
ここで勧誘を白状させても仕方ないと思い、
WARRENを辞める意思を聞き、佐々木と連絡を取るように促し、終わりにした。
旧友2人と別れ、
その後すぐに、湯川から電話を受けた佐々木から連絡があり、
俺と佐々木と湯川の3人で会い、話をする事に。
湯川から色々と話を聞く。
大学の友達2人を勧誘し入会させてしまって、その対応について困っているようであった。
「さっきは急なことで嘘をついてしまった」と、謝罪も受けた。
ケアは早いほうが良いという事で、すぐに2人を呼び、謝罪することに。
湯川宅の近くへ移動。
2人をそれぞれ呼び、それぞれに湯川が誠心誠意謝罪した。
どちらも説明するだけで納得してくれ、問題なく和解ができ、安心した。
湯川も佐々木同様、子会員の責任を取り、行動していくこととなる。
1:30頃帰宅
予想外に物事が進んでしまい、波乱な一日だった。
この日以降、佐々木&湯川の人望もあり、
ここから脱洗脳、脱会の連鎖が続いていくこととなる。
この時点での組織図は下記のとおり。
第六章:脱洗脳の連鎖、組織壊滅へ へ続く
コメント