この記事では、
『後出しマルチの手口』と『洗脳の心理テクニック』について解説します。
私が潰した詐欺師が使っていた手口の解説です。
『勧誘方法』『勧誘時の心理テクニック』『入会後の心理テクニック』の3つに分けて記載していきます。
「詐欺師を潰した話(全8話)」を読んでからの方が分かりやすいので、
先にそちらを一読いただければ幸いです。
本記事の構成は下記目次の通りです。
はじめに:マーケティング
「モノを売る」という行為は、
詐欺師でも真っ当な企業でも変わりません。
「モノが欲しい」という購買意欲を掻き立て、
利益を得るため、
真っ当な商売を行う真っ当な企業においても心理テクニックを乱用しています。
モノを売る側は、
消費者に少しだけいじわるをし、
モノの価値を「本来よりも高く見せる」必要があるのです。
詐欺師のみならず、
世の中の全ての企業が工夫を凝らし、
あなたの財布を狙っています。
つい、
衝動的な買い物をしてしまう方は特に気を付けてください。
これから伝える「詐欺の手口」と「心理テクニック」を頭に入れておけば、
万が一詐欺師の勧誘を受けた際にも冷静で居られると考えます。
また、
普段の無駄な買い物も減り、
倹約家へ一歩近づくでしょう。
これからお伝えするのは、
私が潰した詐欺師の手口になりますが、
その他多くの詐欺師も多用している手口になります。
詐欺師の勧誘に悩む方たちの参考になれば幸いです。
私個人としては、
詐欺の手口と心理テクニックについて、
中学校の教育に組み込むべきだと考えています。
それくらい、
基本的で重要な話です。
詐欺にあわないためには、
『事前に知っておくこと』が非常に重要です。
それでは、
いきましょう。
勧誘方法
これからお伝えする勧誘方法は、
後出しマルチに限らず、
多くのマルチ商法(合法)においても共通して用いられます。
ほとんどが原始的で、
昔から変わらず使われている方法であり、
これからの時代も変わらず用いられると考えられます。
情報弱者を狙う
詐欺のド鉄板です。
高齢で認知力が低下した人もターゲットになりやすいですが、
私が潰した詐欺師は20〜21歳をターゲットにしていました。
※成人引き下げが行われた現在は18〜20歳あたりがターゲットになりやすいか?
成人したてで、
かつ、
世間知らずの未熟者だからです。
成人していることで保護者の同意が不要で契約がスムーズに進み、
学生ローンでも保護者不要で借り入れができてしまうため、
悪徳業者からすれば格好のターゲットです。
人伝いでの勧誘
友人つながりで信用させるのも鉄板です。
入会後、
人脈整理を行い、
友人を順位付けし、
「勧誘に成功しそうな人」から順に勧誘を行っていました。
序盤は仲の良い友人から攻めるため成功率は比較的高く、
徐々に成功率が低下する傾向にあります。
勧誘の数をこなすにつれて勧誘のトークスキルは向上しますが、
「元々の関係性」の方が重要である印象です。
親しい関係であればあるほど、
信頼関係があり勧誘に望ましいことは確かです。
勧誘マニュアルが存在する
電話でのアポイントから勧誘当日の流れまで、
細かいマニュアルが存在しました。
マニュアルは会員伝いでその都度教育され、
個別にノートに書いて受け継ぐ形でしたが、
全くブレることなく完璧に伝言されていました。
受け継ぐ際も、
幹部が徹底してチェックしていたことが分かります。
このマニュアルに沿って、
忠実に勧誘が行われます。
※恐らく、摘発から逃れる為に電子データや冊子によるマニュアルを作らなかったのだと考えています。
私は会員の下記ノートを多数回収し、『マニュアルの証拠』として行政機関に情報提供しました。
目的を告げない、NGワード設定
電話でのアポイントでは、
NGワードが設定され、
絶対に「当日の目的」を告げてはならない決まりでした。
後述する『ローボールテクニック』を使用するため、
当日の目的を意図的に隠す必要があったからです。
下手なことを言わないよう、
勧誘電話している隣では上位会員が会話内容を確認していました。
電話アポイントで伝えて良いのは「凄い人に会わせて話を聞かせたい」という点だけでした。
口止めの徹底
ターゲットが周囲の友人や家族に相談することになれば、
「怪しい」と悪評も立ち、
悪徳業者にとって非常に都合が悪いこととなります。
勧誘の際には「お前だけに話している」と特別感を出し、
口止めを徹底していました。
ターゲットにとってのアウェーで攻める
ルノアール(高級喫茶店)など、
普通の大学生が普段使わないような高級カフェを勧誘の場として使い、
ターゲットにとってのアウェーで攻めることを徹底していました。
後述の『内部者の成功話』『常に数的優位を崩さない』を上手く実施するためにも、
悪徳業者にとってのホーム、
ターゲットにとってのアウェーで勧誘を行うことは重要なポイントでした。
また、
「非日常感で惑わす」という目的もありました。
内部者の成功話
「たまたま近くに居る」と偶然を装い、
次から次へと複数の内部者に会わせ、
成功話を聞かせていましたが、
内部者は全て事前に配置され、
全ては仕組まれていました。
成功者は『稼げるアピール』を執拗に行い、
まるで投資必勝法DVDで稼げているかのように錯覚させていましたが、
実際は紹介料10万円で稼いでいるだけでした。
常に数的優位を崩さない
後述の『多数者効果』を使用するため、
ターゲット1人に対し、
常に複数人で囲い込みます。
翌日に持ち越した場合も、
ターゲット1人を複数で囲い込み、
勧誘がとにかくしつこい傾向にあります。
その日のうちに即決させる
じっくり考える時間や、
友人・家族に相談する時間を与えてはいけないため、
その日のうちの即決を促します。
後述の『嘘の希少性』を使い、
「今しかない」と焦らせていました。
私の場合、
夜まで家に押し掛けられ、
契約を迫られて恐怖を感じました。
※興味があるフリ・騙されたフリをした私も悪いですが。
エサを用意する
・クラブ貸切で有名人も来るパーティー
・高級車を引き連れてクルージングパーティー
などのイベントも用意し、
特別感を出すことで釣ります。
紹介料の存在を徹底して隠す
これが非常に重要なポイントでした。
紹介料10万円の存在を明かすと契約がかなり不利になるため、
勧誘時には紹介料の存在を隠し、
「連鎖販売取引(マルチ商法)」ではなく、
「訪問販売」であると主張していました。
たちが悪いことに、
紹介料10万円の存在が明かされるのは、
契約後の「クーリングオフ期間が過ぎた後」です。
勧誘時の心理テクニック
勧誘時の心理テクニックを紹介し、
1つずつ解説します。
洗脳した会員を利用した善意による勧誘
心からの『親切攻撃』で惑わし、
信用させる勧誘でした。
完全に洗脳させた会員を駒として使い、
100パーセントの善意で勧誘行為を行わせます。
仲の良い友人からの勧誘だと効果は倍増。
※具体的な洗脳の手段については、
『勧誘後の心理テクニック』で後述します。
多数者効果
多数の同じ意見を持った人間で少数の人間を囲むことで、
「自分がおかしいのではないか?」という錯覚に陥らせる心理です。
ターゲット1人に対して常に複数の内部者で囲み、
数的優位の状況で攻め、
判断を誤らせていました。
嘘の希少性
『限定200人』という嘘の設定を作り、
「今しか出来ない」「絶対に後悔する」と焦らせ、
「正常な判断が出来ない心理状態」に持っていく手法を使っていました。
※本当に数量限定であれば問題ありませんが、
詐欺師は嘘をつきます。
ローボールテクニック
はじめはハードルの低い要請をし、
少しずつハードルを上げていく手口のこと。
いきなり無茶な要請をしても通りませんが、
低い要請から少しずつハードルを上げるだけで成功しやすくなります。
私が潰した詐欺師の場合、
電話のアポイントでは「56万円の投資必勝法DVDを売りたい」とは絶対に言わず、
徐々に全貌を明かしていきました。
「すごい人の話を聞かせたい」
→「実は投資の話なんだ」
→「実は56万円の投資必勝法DVDなんだ」
と自然にハードルを上げる方法でした。
※さらに、
肝である紹介料10万円の存在は、
契約後・クーリングオフ期間が過ぎてから明かすという酷いものでした。
コントラスト効果
前後の対比させるものによって、
印象が大きく変わるという心理現象です。
高学歴であっても一流企業に勤められるとは限らない時代です。
そして、
一流企業に入っても、
終身雇用は崩壊している時代です。
時代の先行き不安につけ込み、
日本の未来を散々否定した上で、
救いの手を差し伸べる手法を使っていました。
日本の未来を散々否定した後、
「でも、俺らは生き残る術を知っているんだ」という言葉を使うことで、
本来以上に強い力が生まれます。
ドア・イン・ザ・フェイス
最初に無理な商品(フェイク)を提示し、
のちに手ごろな商品(真の要請)を提示し、
安心させる手口のこと。
最初は投資必勝法DVDの価格は400万円だと言い、
特別価格(元からこの価格)として56万円を提示していました。
入会後の心理テクニック
最後に、
入会後の心理テクニックを紹介し、
1つずつ解説します。
後悔回避バイアス
後悔というものは、
強い認知的不協和(自分の中の認識や思考の対立・葛藤、不快感)をもたらすため、
無意識に後悔しないような意思決定をしてしまいます。
これを「後悔回避バイアス」と呼びます。
後悔により認知が歪み、
詐欺師・悪徳業者の良い面しか見られなくなってしまう現象です。
56万円という大きな出費や学生ローンの借金、
過去の全ての活動に費やした時間の「無駄」を認めるには相当な勇気が必要です。
「56万円も払ったし、絶対に勝てる投資DVDに決まっている。」
「今まで活動に多くの時間を費やし、日々勉強しているのだから、絶対に素晴らしい集団に決まっている。」
といった思考に至っている被害者が多く居ました。
活動期間が長くなればなるほど、
後悔が大きくなるため、
後に引けなくなってしまう傾向にあります。
プラシーボ効果(偽薬効果)
信じることで、
砂糖の塊でも薬になる心理のことです。
今稼げていなくても、
投資必勝法DVDや詐欺師の幹部たちを信じてしまえば、
本当に周りが見えなくなります。
投資必勝法DVDには4つのシステムを入れ、
そのうち1つは『最後の砦』として超難解なシステムとし、
夢を見続けさせる手法も使っていました。
※実際には『最後の砦』のシステムを使う人はいませんでした。
完全な飾りで、もちろん必勝法などではありません。
被害者のプライドを利用した心理作戦
『被害に遭ってしまった』
『騙されてしまった』
という事実は自尊心を酷く傷つけます。
『被害に遭ってしまった』という事に気付いたとしても、
プライドを捨て、
被害に遭ったと公表し、
被害者として恥を晒しながら行動していかなければなりません。
自分がもし子会員を作ってしまった場合は、
同時にその責任も負わなければならなくなります。
以上の事から、
被害者のプライドが『泣き寝入り』や『消極的な行動』へと導きます。
勧誘行為失敗による集団依存
勧誘の目標を毎回立て、
活発に勧誘行為を行わせ、
失敗を重ねることにより悪徳組織以外での居場所を無くさせる手口です。
他のコミュニティーで孤独を知り、
なおさら悪徳組織が生きがいとなり、
ますます依存してしまう手遅れな被害者の姿も見てきました。
勧誘の最初の頃は親しい友人を勧誘し、
上手くいっていた人でも、
後半以降はあまり仲の良くない友人を勧誘するため、
失敗が重なります。
失敗が重なることで、
友人を失っていくことも実感し、
自暴自棄になって勧誘に躍起になり、
負のスパイラルに陥る形です。
集団パワーの心理
本音は違うのに、
そこに居る皆が一致した判断をしていると思い込む心理のこと。
熱狂集団の中に入ってしまうと現実感覚がずれ、
正常な判断が出来なくなります。
もし悪徳業者に疑念を持つことがあっても、
皆は信頼しきっているように見えるため、
雰囲気に飲み込まれ、
その疑念は抑え込まれてしまいます。
保有効果
あるモノを一度自分のモノにしてしまうとその価値が高まってしまい、
手放したくなくなる心理のことです。
投資必勝法DVDなどの商品に限らず、
詐欺師や悪徳業者の内部者(仲間)との人間関係も該当します。
返品、
クーリングオフ対策として用いられることが多いです。
返報性
他人から何か恩恵を受けたら、
お返しをしなければならないという気持ちになる心理のことです。
悪徳業者に入り、
親会員に証券口座開設手続きやら学生ローンの手続きやら投資のやり方やら、
何から何まで手伝ってもらったことに感謝し、
今後何かをお返ししなければならない思考に至ります。
悪徳業者に入った以上、
悪徳業者での関わりがメインになるため、
この心理によりますます依存していきます。
グッドフィーリング
クルージングパーティーやクラブパーティーなど派手なイベントに参加することによって心地よくなり、
『自分は特別な存在である』と勘違いしてしまいます。
リムジンなどに乗って、
『一般人』から注目されるのはとても気持ちが良い事だと思います。
※実は怪しい集団だと思われているとは知らずに。
ハロー効果(光背効果)
ある人物の1つか2つの特徴に引きずられ、
全体の評価を高くor低く歪める現象の事です。
私が潰した悪徳業者では、
組織の代表・幹部・自分の親会員などが尊敬の対象でした。
逆に、
勧誘したのに入会の決断ができない人間は「度胸が無い」と、
その一点だけで切り捨ててしまう傾向が強かったです。
努力による成果を横取り
私が潰した詐欺師は、
セミナーで目標を設定させて皆の前で宣言させ、
士気を高く持たせることで、
努力をさせました。
その努力により得た成果を、
あたかも組織の活動によるものだと錯覚させていました。
努力をし、
それにより成長し、
何か成果を得られたのであれば、
それは素晴らしい事です。
しかし、
その人間の本質が「詐欺師」では全く救われません。
『悪徳業者へ入会させた人数』を競い合うなんて最悪です。
そのエネルギーを、
もっと他の善い事に使って欲しいと願っていました。
まとめ:詐欺の手口と心理テクニックを知り、被害を防ぐ
以上、『後出しマルチの手口』と『洗脳の心理テクニック』について解説してきました。
まとめです。
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・はじめに:マーケティング
→詐欺にあわないためには、『事前に知っておくこと』が非常に重要
・勧誘方法
①情報弱者を狙う
②人伝いでの勧誘
③勧誘マニュアルが存在する
④目的を告げない、NGワード設定
⑤口止めの徹底
⑥ターゲットにとってのアウェーで攻める
⑦内部者の成功話
⑧常に数的優位を崩さない
⑨その日のうちに即決させる
⑩エサを用意する
11.紹介料の存在を徹底して隠す
・勧誘時の心理テクニック
①洗脳した会員を利用した善意による勧誘
②多数者効果
③嘘の希少性
④ローボールテクニック
⑤コントラスト効果
⑥ドア・イン・ザ・フェイス
・入会後の心理テクニック
①後悔回避バイアス
②プラシーボ効果(偽薬効果)
③被害者のプライドを利用した心理作戦
④勧誘行為失敗による集団依存
⑤集団パワーの心理
⑥保有効果
⑦返報性
⑧グッドフィーリング
⑨ハロー効果(光背効果)
⑩努力による成果を横取り
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以上が、
私が潰した詐欺師の手口の解説です。
様々な心理テクニックが散りばめられていました。
細かいものは紹介しきれていませんが、まだまだあります。
この心理テクニックを理解した上で、
改めて「詐欺師を潰した話(全8話)」を全て読み直してみると面白いかもしれません。
私も実際に勧誘を受けた身ですが、
このテクニックはかなり自然に繰り出してきます。
やはり詐欺のプロです。
舐めてはいけません。
ボーっと生きていたら、
騙されてしまうかもしれませんよ。
私が参考にした書籍はこちらです。
犯罪心理学について学びたい人は、
他にも色々な書籍を手にしてみてください。
しかし、
あまり悪用しないことをお勧めします。
悪いことをすれば、
私みたいな人間に、
必ず潰されます。
真っ当な商売で使ってくださいね。
解説2:後出しマルチの違法性 へ続く
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