【がんが消える魔法の粉】アガリクスが許せないって話

③『正義の味方ごっこ』の裏話

今日は医療従事者として、
医療業界に蔓延る闇の話をしたいと思います。

個人的に、
どうしても許せない話です。

「がんが消える」とされる、
アガリクスの話です。

今回は、過去の2つの経験を基に、私の思いをつづります。
※一部、特定を避けるために内容を変更していますが、全て私の経験に基づいています。

母のがん闘病

いきなり本題ですが、
私は大学生の時に母親をがんで亡くしています。

亡くなったのは、私の20歳の誕生日の直前でした。

私が幼稚園に通っている頃から、母はずっとがんでした。
手術や治療をして、再発・転移を繰り返していていました。

しかし、
子供である私たち兄弟に対してはずっと隠し通されており、
私がその事実を知ったのは、母が余命半年を宣告された時でした。

私は、
母が末期がんだと知らされた時、我を失いました。

後から思い返せば、その事実に気づくチャンスはいくらでもあり、
違和感はたくさんあり、気づかない方がおかしい状況でしたが、
私は全く気づくことができませんでした。

※違和感の例
・夜中にかつらを外す姿を見てしまった(抗がん剤の副作用のため)
・抱っこを求めてもやんわりと拒否され、スキンシップが無かった(乳がんで切除していたため)
・母親が一人で出掛けて、代わりに親戚の叔母さんが家に来る日が定期的にあった(定期受診しなければならないため) など

「違和感の正体を知りたくない」という気持ちもあったのだと思います。
洗脳とほとんど一緒ですね。

激しく、過去を悔やみました。

「もう末期で歩くこともままならないから、ろくに親孝行も出来ない」
という不可解な言い訳をし、
これまで私に嘘をつき続け、大事な事実を言わずに隠してきた家族・親戚を恨みました。

私は被害者ぶり、
「もっと早く教えろよ」と、
八つ当たりして怒ることもありました。

今思えば、馬鹿としか言いようがありませんが、
絶対に出来もしないのに、
「手遅れになる前に教えてくれれば、医療や薬の知識でなんとかできた」
と本気で思っていました。

そういった不可解な思考は、
十数年もの間、まんまと騙され、
『気付くチャンスは幾つもあったのに気付くことの出来なかった自分』に対する後悔の表れだったと思います。

そうして、
ずっと過去ばかりを悔やみました。

でも、
そうしてる間の、
悔やんでいる間の、
「今」その時にできる事もたくさんありました。

いや、
その時にしかできない事が山ほどあったのにも関わらず、
半年持たずして母が亡くなってしまいました。

ろくに親孝行できなかったため、
そのことに物凄く大きな後悔が残りました。

私はその当時、
病気にかかったように、
素直に何かを表現することができない人間でした。

親しい関係であればあるほど照れ臭くて仕方なくて、
毎日のように感謝はしていたけど、
思ってはいたけど、
母に面と向かって「ありがとう」って言った事なんか、
たぶん、一回もありませんでした。

結局、最後の最後まで、
感謝の気持ちなどを素直にうまく伝える事が出来なくて、
母が居なくなってから、
『もう伝えれない』という事実が、とてもつらい後悔を生みました。

もう絶対に後悔することのないよう、
それ以降は、感謝の気持ちを手紙に書き、伝えることを習慣にしています。

母親がいなくなり、
ありとあらゆる後悔が押し寄せてきました。

私は、
そういう後悔からも逃げ出したくなりました。

しかし、
ここで逃げたら何も成長しません。

私は、
これまで自分が知らなかった、
母親が苦しんだがんの闘病について全てを知り、
「死」に向き合い、受け入れるために行動しようと考えました。

まず手始めに、
家族が「面倒だ」と言い、
放置していた医療費控除の申請作業を引き受けることにしました。

医療費控除というのは、
年間10万円以上かかった高額な医療費に対し、
残してある領収書を集めて計算し、申請することで税金が返ってくるシステムで、
過去5年に遡って申請が可能でした。

私の母親は、亡くなる前の4年間、医療にかかった領収書をちゃんと残していました。
乱雑にいくつかの箱・封筒に入れられており、
私はそれを全部集め、時系列順に並び替え、計算し、医療費控除の申請をはじめました。

すると、
病院や薬局、ドラッグストアの領収書が沢山出てきて、
どの時期に通院し、どの時期にどういう治療をしてたかが分かり、
とても生々しく、
過去の私の後悔とも重なり、
本当は知りたくないため、
目を背けたくなるとても億劫な作業でした。

しかし、
時間をかけてしっかりと向き合い、やりきりました。

医療費控除の対象となるものは、
診療代と薬代をはじめとし、一般用医薬品や滅菌ガーゼやおむつも含まれます。

一方、
健康食品やサプリメントなどは対象とならないため、
『医療費控除対象のもの』と『そうでないもの』の仕分けを行いました。

すると、
たまによく分からない手書きの領収書が出てきました。

1枚で5万円など、
驚愕する金額の領収書でした。

何故か「医薬品代として」としか書かれておらず、
明確な商品名が記されていない個人経営薬局の手書き領収書で、
その『意味不明なもの』はひとまず別で集計することにしました。

そして、
全て計算をしたところ、
『医療費控除対象のもの』の費用が三年間にわたり50万円を超え、
直近三年間が医療費控除申請の対象となりました。

一番多い年で約75万円/年の膨大な額になり、
壮絶な治療の全貌を知りました。

それに対し、
前述の『意味不明なもの』も、
その高額医療費に劣らぬ額となりました。
一番多い年で60万円/年でした。

その時にはなんとなく、
嫌な予想がついていました。

母親が使っていたタンスの中を確認したところ、
その奥の方に、
アガリクスなど、
その他『がんが消える』健康食品がしまってありました。

一箱が定価5万であることを確認し、
全てを悟りました。

正直、とっても悲しくなり、
情けない気持ちになり、
やり場のない怒りや、
その他、色々な感情に苛まれました。

果たして、
その魔法の、『がんが消える』健康食品が効いていたのかは、
私が、薬や、キノコを含めた天然物化学や、
薬物動態について必死に勉強をしたところで、
知る手段がありません。

いや、
個人で臨床試験をするだけの力がないため、
小さな力では絶対に『確かめようがないだけ』です。

もしも、
これが全て効果のないものであったら、
私の母の、『命にすがる思い』というのは報われません。

今、私が薬剤師になっても、
科学的には信じ難い、疑わしい有効性については絶対に確かめようがありません。

正直に言いますが、
それら疑わしいモノを100パーセント否定して、
『効果がない』と証明することが出来ないという、
それら疑わしいモノの『曖昧さ』『確かめようのなさ』こそが、
悪徳業者がつけこむスキマであると考えています。

やはり、
アガリクスが有効性のないモノであるなら、
過大広告の可能性があるなら、
ぼったくり価格で、価格と効果のミスマッチであるなら、
そういう『曖昧さ』につけ込んで、
「バレないだろう」という隙間につけ込み、

しかも、
「生きたい」という、
人間の一番儚い、切ない感情につけ込んで、

「良いことでない」と自覚しながら高額で商売をして、
大きな利益をあげて、良い思いをしている人間が居るなら、

私は、
絶対に許しません。

結果論ですが、
私の母のがんは消えることなく、
毎回も手術をして、
乳がんも、リンパ腫も、皮膚がんも、
外科的な処置・切除で全て誤魔化していました。

母の十数年にわたる延命は、
『化学療法と外科的措置の成果である』と、
私の目には映っています。

何度も再発を繰り返しているあたり、
『がんが消える魔法の粉』により免疫が強化されているとは言い難く、
結果として亡くなっているため、

現時点で、
必死な、命にすがる思いを踏みにじってるため、
私は許せません。

がんが消える魔法のきのこ?

緩和ケア病棟での経験

前述の通り、医療費控除申請において母のがん闘病に向き合った後、
『死』にさらに向き合い、学ぶため、
薬学部の病院実習において、緩和ケア病棟(終末期医療)のある病院を選びました。

そして、
緩和ケア病棟を中心に実習を行うこととしました。

まず、
終末期の患者(がんの末期患者など)の心理として、
『キューブラー・ロスの死への5段階』について共有いたします。

人間が死と向き合う時の心理変化として、
下記1〜5の5段階を踏むと言われています。

1否認
自分の命が長くないことに衝撃を受け、その事実を感情的に否認したり、
その事実から逃避しようとしている段階。
周囲の認識や態度にギャップが生じるため、孤立しがちになる。

2怒り
死ぬという事実は認識したが、
一方で、「ではなぜ、自分がこのような境遇になってしまうのか」といった思いが強く、
周囲に反発したり、怒りがこみあげてきたりする。

3取り引き
死をもう少し先延ばしできないか、
あるいは、奇跡が起こって死を回避できないかと考えて、
神仏にすがったり、善行を行ったりする。

4抑うつ
死を避けられないことが分かり、
あきらめや悲観、むなしさ、憂うつ、絶望といった気持ちが支配して、落ち込む。

5受容
死を、誰にでも訪れる自然なものとして受け入れるようになる。
これまでの価値観や視野とは異なる次元があることを理解し、心静かに暮らす。

※覚え方は、「ひつじ(H・I・T・U・Ji)」です(医療系の国家試験に出ます)。

私は、
今もこの5段階を見るたびに胸が痛みます。

緩和ケア病棟での実習では、
1人のがん患者様に寄り添わせていただきました。

上顎洞がんという、
その名の通り、上顎の、鼻腔あたりのがんの患者様で、
肥大した悪性腫瘍により片目の眼球が腫瘍に潰されてしまっていて、
当然失明しており、腫瘍細胞がまぶたの間から表に出てきている状態でした。

可能な限りの処置も行っていましたが、
がん細胞の無限増殖能というものは本当に絶望的で、
驚異的なスピードで増殖し、蝕んでいることが分かりました。

残された片目をも圧迫し、
常に目周辺を氷で冷やし、
確実に迫ってくる全盲の恐怖に耐えている状況でした。

そのような状況ですから、
当然、顔面の全ての神経が圧迫されて、
とんでもない痛みに襲われ、
オピオイドも鎮痛補助薬も使用し、
副作用で幻覚・悪夢なども現れ、暴れてしまったりして大変な時もありました。

そんな中、
安静なときに何度も会話させてもらい、
いろんな心理を学びました。

キューブラー・ロスさんの言う通りで、
終末期には5段階の心理があることを学びました。

厳密にいえば、
心は5段階を踏みながら、日々行き来していました。

緩和ケアのため、
第一段階目の『否認』はほとんど見られることがありませんでしたが、
『怒り』『取り引き』『抑うつ』『受容』の段階を、
その時々で行き来していました。
午前と午後で様子が全く違う日もありました。

その中でも、
やはり、
『取り引き』という3段階目が想像を絶するほど辛く
私の心に深く残りました。

緩和ケア病棟は入院費用が比較的高いため、
入院して来られる患者様は裕福な方が多い傾向にあります。
私がみていた患者様も社長さんで、お金持ちでした。

金銭的に辛い時期を乗り越えて、
その患者様一代で切り開いた会社で、
「青春を捧げて頑張った」と語っていました。

しかし、
がんのせいで会社をたたむことになってしまいました。

話を聞けば聞くほど、
その患者様の目の前で泣いてしまいそうになるほど、
がんというものは理不尽であると感じました。

がんが理不尽だというのは、母の件でも強く感じていました。
『私の良いところ』のほとんどは母由来です。

「何故、あんなにも優しい人間が、目一杯、十数年もがんで苦しんで、
何故、詐欺などをする悪い人間が、のうのうと、苦痛なく生き続けているのだろう。」
このような、どうしようもない怒りに苛まれました。

その患者様も、
「俺は何も悪いことしてないのに何故こうなるんだ」
「いくら出せば健康な体が戻ってくるんだ」
「これから完治できる薬は出る予定はないのか?全財産出すから、輪廻転生なんかなくていいから、次の人生はなくてもいいから、その薬が欲しい」
と言いました。

やはり、
藁にもすがるような気持ちで、
がんを消すような、
『魔法のきのこ』や、『魔法の粉』や、『魔法の水』があれば、
どんな大金を出しても、
どんな大切なものを引き換えにしても、
『取り引き』したくて、
手に入れたいものなのだと、
私の心に強烈に残りました。

そういうリアルな姿を目の当たりにした結果、
私の母がアガリクスにすがるのも当然のことだと理解しました。

でも、
余計に、
そこにつけ込む人間が存在することに腹が立ちました。

まとめ

私にとってがんは大きなテーマとなったため、
『母のがん闘病』『緩和ケア病棟での経験』の後、
さらに、薬学部の卒業研究と勉強で追求をしていきました。

特定を避けるため、あまり詳しく言えませんが、
とあるがん治療薬がバックグラウンドにある有機化学の研究を選び、
心の中に残る全ての後悔をぶつけるが如く、
研究に没頭しました。

研究自体は基礎研究のため、
がんの臨床現場とは直接的な結びつきはありません。

しかし、
毎日新規化合物の合成を試行し続け、
15個の新規化合物を自分の手で生み出した結果、
1つの新薬を開発することの難しさを身をもって学びました。

学会に何度も参加し、他発表者の様々な知見に触れ、
最新の論文を読み、体系的に学ぶことで、
アガリクスのような非科学的なモノに対する疑念がますます強まりました。

アガリクスは、
有効性の議論の前に、
安全性(しかも発癌性)の試験に引っかかり、
癌を治すどころか「発癌性がある」と発表されたこともあります。

別の研究では「安全性には問題ない」という発表があったり、
詳しいことは解明できていません。

免疫に対する有効性も相変わらず証明できておらず、
疑わしいままです。
厚生労働省でも、「ヒトに対する有効性について確認しておりません」と発表しています。
参考:アガリクス(カワリハラタケ)を含む製品に関するQ&A

また、
緩和ケア病棟の医師に聞いても、
アガリクスなどの健康食品に関しては、
「有効性については疑わしいが、なす術がないため、患者の最後の意思を尊重し、QOL(患者様の生活の質)維持のために黙認している状況である」
ということです。

一個人の力では、
「がんが消える魔法の粉は存在しない」と証明することはできないため、
ここでの明言は避けますが、
現在のアガリクスの科学的見解および私見は、
これまで述べた通りになります。

「生きたい」という、
人間の一番儚い願いにつけ込む悪徳業者が存在するなら、
私は絶対に許しません。

現在は安価なものも多いようですが、
『1箱5万円(1ヶ月分)』は明らかなぼったくり価格で、
価格と効果のミスマッチではないでしょうか?

『悪徳業者が詐欺まがいの商売を行うこと』が最も悪いですが、
消費者が正しい判断を下ることが出来れば、
その悪徳業者の財布が潤うことはありません。

一人でも多くの消費者が、
正しい判断を下せる世界になるよう、
心から願っています。

追伸

最近読んだ、『死』に関する良書を紹介します。


死ぬときの後悔No.1は「もっと冒険しておけば良かった」だそうです。
私も前述の通り、後悔だらけの人生でしたが、様々な挑戦をすることで、
後悔のない人生に近づいていることを実感しています。

いつか必ずやって来る『死』の瞬間まで、
命を完全燃焼させるため、行動あるのみです。
くすぶっている暇はありません。

現状に不満があり、なかなか行動できない方におすすめの本です。
興味がある方は是非読んでみて下さい。

また、『死』のテーマに関連し、
少し話したいことがあるので、次回はその話をします。
参考:【人生を充実させる】「バタフライエフェクト」思考

がんの告知についての私見も、別記事にまとめたいと思います。
参考:【幼い子供へのがん告知】幼い子供を持ち、がんの診断を受けた人に伝えたい話

山口県下関市

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