第三章:圧倒的情報不足、苦悩の半年間 からの続き
2011.2.25
地獄の定期試験終了。
2011.2.26
テスト疲れから丸一日寝ていた。
2011.2.27
インターネットでWARRENについて調べまくる。
リミット間際で焦りが半端無かった。
12時頃、やっと埼玉県のHP(2011.1.27公開)の情報を発見!
この情報が、インターネット上に出た初めての被害情報であった。
※現在、HPは削除され閲覧できず。
「56万円の投資用DVDの勧誘に注意」「紹介料10万円が得られる連鎖販売取引の実体をもつ」という注意喚起の情報が、当時の埼玉県のHPに掲載されていた。
これで勝てる。
しかし、同時に佐々木が黒だと認識。
佐々木は私に嘘をついて紹介料10万円を手に入れようとしていたことを知り、泣けた。
そして、佐々木の勧誘初日の嘘を鵜呑みにし、
紹介料の存在を強く追求しなかった過去の自分を悔やんだ。
WARRENの本質は紹介料が存在する連鎖販売取引であるが、
それを隠して勧誘を行い、訪問販売(投資必勝法DVDの販売)と見せかける『後出しマルチ』という括りの悪徳商法であることが分かった。
少しだけ法律の勉強をする。
しかし、類似した悪徳業者の過去の行政処分事例の情報は見当たらず、
新規性が高い詐欺であることが分かった。
当時は非常に珍しい詐欺の手口であった。
佐々木はなぜこんなにも厄介なモノを持ち込んできたのか、、、
さすがの行動力としか言いようがない。
手口が少しだけ似ている詐欺の情報を集め、2chや知恵袋の情報を印刷し、明日の準備。
競馬の予想ソフトの勧誘については、ネット上である程度、悪評が賑わっていた。
合法であるマルチ商法でも、勧誘により信頼関係を失うということが明確であり、
『紹介料の存在があることで周囲からの信頼を失う』というポイントで攻めたいと考えた。
一通り調べた後、
全てが馬鹿馬鹿しくなり、無気力になる。
正直、明日のこともめんどくさくなり、
このまま佐々木を着信拒否して、友達を辞めてしまいたいと思った。
ここで佐々木を見捨てれば、私の悩みは綺麗さっぱりなくなって、それで全てが終わる。
ただでさえ友達は少ないのに、
「俺はこうやって大事なものを失う運命なんだなー」とぼーっと考え、
現実逃避し、そのまま何も考えず横になり、3時間くらいふて寝する。
いつの間にか日が暮れており、部屋が真っ暗になっていた。
この時のことは鮮明に覚えているが、
一旦空っぽになった心に、詐欺師への怒りだけが徐々に充満されていった。
未来ある学生の、かけがえのない時間、
よりによって、私の大事な親友のかけがえのない時間と金を奪って、
啓太のような出来損ないの人間が、その足りない頭を必死に使って、
法律におけるグレーゾーンの商売を必死に考えて、
純粋な善良な大学生を騙して、大きな借金をさせて、
宝石に見せかけた石ころを56万で売りつけて、
当然、その石ころには価値なんてないから、投資に負けることで、
さらに金に困らせることで、
そこにつけ込む形で、手っ取り早く10万円が手に入る勧誘に走らせて、
勧誘をさせることで友達も失わせて、犯罪に加担させている。
冷静になれば、
佐々木は加害者ではなく、被害者であることは明らかだった。
生まれて初めての抑えきれない怒りで、
何の取り柄もなく、失うもののない大学生を行動させるのには十分なエネルギーだった。
何もせず見捨てるにしても、戦うにしても、
どうせ親友を失うのなら、徹底的に詐欺師と戦おうと思った。
ただ、相手は勢力がでかく、全貌が見えず、
もしかしたら、裏にヤクザとかいる可能性もあるし、
「個人で戦っても負け戦だろうなぁ」と思った。
しかし、負けるなら負けるで、
少しでもその詐欺師に爪痕を残して、
悔いのないよう戦ってから、やりきってから、
「このダサい人生を終わらせよう」と考えた。
人生で初めての『本気で頑張ること』になると思った。
私は、親友を救う決心をして、
それと同時に、この詐欺師をぶっ潰すことを決めた。
やっと周りにも言える状況になったため、とりあえず出身中学校に情報拡散。
佐々木の耳に届かぬよう、佐々木と近からず遠からずな、5人に連絡。
これ以上被害が広がらないよう注意喚起を行う。
その5人のうち2人も佐々木から電話勧誘を受けていたと知る。
2人に詳細な情報提供。2人に聞くと、佐々木の行動は客観的に見るとヤバい事だという。
2人とも電話勧誘の段階で怪しいと思い、会いに行かずに断ったという。
改めて『自分はおかしくない』という事が分かり、味方ができたことに安心した。
「就活の詐欺っぽかった」という2人の証言から、
佐々木は投資詐欺をやめて、新しく就活の詐欺を行っているのではないかと思い、ますます許せなくなる。
※実際は、電話勧誘の際に「就活どうよ?」と声をかけていただけであった。
しかも、佐々木とは仲が良いと言い難い2人だったため、手当たり次第に勧誘していることが推測できた。
明日の夜までにWARREN内部者に情報が回ってしまったら計画倒れになってしまう為、
必要以上の情報拡散は避ける。
情報を与えた5人には、3月1日になったら周りに情報拡散するように頼む。
とにかく味方が出来たことが嬉しかった。
家族にも初めて話した。
明日の家での話し合い中に佐々木に殺されそうになったら助けてもらうことに。
佐々木に明日の事について連絡。
佐々木「明日はよろしくな!最近は活動も順調で、お前の他に3人入ったんだわ!みんなここ最近だから、お前とは同期みたいな感じだな!楽しみにしててな!」
佐々木は3人を入会させてしまったという。
そのうち、出身中学校の旧友が2人であった。
恥ずかしながら、ここで初めて責任問題等が生じる可能性がある事に気付いた。
もっと必死になって勧誘をしないよう忠告しておけば良かったと後悔。
加えて、もっと早く埼玉県のHPを見つければ良かったと後悔。
「明日は田中や田代にも知恵を貸してもらうか?」と佐々木。
・・・とんだ詐欺体質。
「A子と別れた経緯も話したいから、どうしても2人が良い」と言い、断る。
また、佐々木の悪い噂を広げたくなかったため、部外者も入れずに2人きりで話したかった。
2011.2.28
朝から緊張。あまり眠れなかった。
万全な準備をし、備える。
作戦としては、
・正当性で勝つために、大きな武器である証拠(埼玉県のHP)で嘘を認めさせ、過去の嘘や矛盾を突く。
・後出しマルチの違法性の説明。このまま組織に所属することは、『犯罪者』とみなされる可能性があり危険であることを訴える。
・高圧的に出ることで相手を感情的にさせ、自滅させる。
・後出しマルチの勧誘をこれ以上続けると友達が居なくなるという現実を突き付ける。周りの声(電話勧誘を受けた2人からの不評)も伝える。
・限定200の矛盾を突く。会員は連鎖販売的に増えているため、謳っている希少性は嘘であることは明らか。
・今後使える情報になるかもしれないから投資必勝法DVDを持ってこさせる。
・過去の楽しかった話をし、情で訴える。
・説得出来なかったら、最終手段として佐々木の両親に言う。
圧倒的に有利な、最強の武器である埼玉県の資料が手に入ったため、
以上の作戦で必ず説得できる気がしていた。
22時頃 過去の怒りも蘇らせ、イメージトレーニング。
友達を辞めるつもりで、全てぶつけてやると意気込む。
23時頃 佐々木登場。いつも以上に高いテンションで現れる。
契約成立(10万円ゲット)に浮かれているように見え、
本当のことが言いだしづらく、なぜか申し訳ない気分になった。
大きな意気込みは、本人を目の当たりにすることで消滅してしまう。
正直ビビっていた。
意を決し、
「佐々木が俺を騙そうとしてきたから、俺も今までたくさんの嘘をついてきた。今日はお互い嘘なしで話し合おう。」と切り出す。
絵に描いたようにビックリする佐々木。
のり「こういう証拠を見つけたんだ。お前は俺を騙して10万円を手に入れるつもりだったんだろう。勧誘時には10万円のことは徹底的に隠されていた。嘘もつかれた。これは大きな裏切りだ。」
佐々木「いやいや、嘘ついたっけ??まぁ、10万円はただのおまけだよ(笑)お前は本質が分かってない(笑)投資と人脈が軸で、こんな10万は端金でしかない!合宿免許とかでも友達紹介キャンペーンで割引とかあるでしょ、あれと一緒!(笑)」
埼玉県HPの注意喚起を見せるが、笑って茶化す佐々木。
のり「こういったものは後出しマルチといって、連鎖販売取引である事実を隠して勧誘をしていて問題になってる。類似した詐欺でも、こういう悪評が立っている。」
佐々木「競馬必勝法とか、そんなくそ怪しいやつと一緒にしないでよ(笑)そもそもこういう外野の声って、全て妬みや僻みだよ(笑)2chの匿名情報なんか特にそうだわ、便所の落書きを信用するなんてガッカリだよ(笑)」
知恵袋や2chの情報を見せるが、またも笑って茶化す佐々木。
投資必勝法を信じている人間が、競馬必勝法をバカにしている。
のり「限定200っていうのも、これまで聞いてきた情報と矛盾している。佐々木は最低でも7代目で、連鎖販売的に会員が増えてるんだから、200は軽く超えている。この嘘についてはどう思う?」
佐々木「あー、それについては、200超えたら新しく200単位で生産するらしいんだわ。まぁ語弊はあるだろうけど、、、そんなに問題か?笑」
思考がイカれている。
希少性をあれだけアピールし、焦らせたくせに。
色々作戦を立ててきたが、
それ以前に全く議論にならないのではないかという不安が立ちこめる。
ここで、『こいつは完全に洗脳されている』と確信した。
完全にこの組織の全てが良いと信じ込んでいて、完全なる善意で勧誘をしてきていたのだ。開始10分にして、説得は不可能だと思えた。
それでも折れずに様々な問題点を挙げ、6時間くらい粘ったが、まるで話が噛み合わない。
こんな経験は生まれて初めてで、絶望した。
まるで時空が歪んだ世界に居るような感覚に陥り、佐々木の顔や背景が歪んで見えた。
洗脳された人間の目というのは、本当に恐ろしい。
目を合わせても、どこか遠くを見ているようで、目が合っているのかわからない。
無気力なようで、虚しい、死んだような目に見えた。
・・・こいつ、こんな顔だったっけ???
小学校時代から飽きるほど見て、見慣れた顔のはずだが、
目の印象が違うため、まるで違く見える。
私が知っている佐々木はどこへ行ってしまったのか?
人格が変わってしまったとしか思えず、
ニセモノの佐々木から発せられる言葉の意味が分からなくなってきた。
最後に、
「WARRENを辞めないようであれば、友達を辞める」と伝えたが、
それでも聞かない。
めちゃくちゃショックだった。
佐々木の顔がさらに歪み、滲み、そして見えなくなる。
会話にならない会話にお互い疲れ果て、自然と言葉もなくなり、
先に佐々木が寝る。
佐々木が持ってきてくれたDVDの外観をこっそり撮影。
流石にDVDの中身の確認はしなかった。
製造販売元に記載の住所は、おそらく組織の住所であろう。
ここに乗り込んで、
啓太を物理的に抹殺してやろう と一瞬思ったが、
これから抜かりのない最強の計画を立て、
その悪徳業者を行政処分に導き、
啓太の名前を『悪徳業者』として社会に晒し、
こいつらを社会的に抹殺してやると決意を新たにする。
寝たフリをして、一時間弱、色々と考える。
話は全く噛み合わなかったが、
佐々木は完全なる善意で勧誘していた事は間違いない。
佐々木は完全に洗脳されていて、私を騙すつもりは無いということが分かった。
過去のさまざまな行動にも合点がいき、スッキリする。
これまで行った録音作戦においても、怪しい点が見られないのは当然のことだった。
もしも、勧誘初日に録音作戦を決行していたら、
私は佐々木の『裏表の無さ』を、『洗脳』ではなく『白』と勘違いし、
入会してしまっていたかもしれない。
そういう意味でも、洗脳による勧誘は非常に恐ろしい。
洗脳の怖さを痛感しつつ、
佐々木の親に伝える事で必ず洗脳が解けるような希望が湧いてきた。
佐々木がそれを許さない気もしたが、最終手段として親への告知を決意。
佐々木が起きて、総まとめとして親への告知へと話を持っていく。
せこいことをすると後々面倒なことになると思い、正々堂々と佐々木の許可を得ることにした。
佐々木は最初こそ「やましいことは一切ないし、言っても構わない」と快諾してくれたが、
時間が経つにつれて「いや、やっぱり色々めんどくなるわ、、、」と慌てだす。
暴れるのではないかとかなり焦ったが、怒ることもなく理解してくれて本当に良かった。
やっぱり佐々木の本質は変わっていないと安心した。
本当に良いやつだ。
その後は楽しかった思い出などを話す。
こちらから情で攻めるつもりで話したが、
これは諸刃の剣で、全てが終わってしまう可能性があると思うと、
なんだかとても切なくなる。
最後まで喧嘩にはならず、これまでのお互いの嘘を許し合い、和解という形で終わった。
佐々木も「しっかり自分で考え直す」と言ったが、
私は佐々木には期待せず、佐々木の両親に全てを託すつもりでいた。
3月頭に佐々木が旅行に行っている間、佐々木宅に行くことに。
翌10時頃解散。
計10時間ほど説得しても洗脳は解けなかった。
この時点での組織図は下記のとおり。
第五章:希望の光、脱洗脳の成功 へ続く
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