解説1:後出しマルチの手口、洗脳の心理テクニック からの続き
この記事では、
『後出しマルチの違法性』について解説します。
私が潰した詐欺師の違法性についての解説です。
「詐欺師を潰した話(全8話)」を読んでからの方が分かりやすいので、
先にそちらを一読いただければ幸いです。
本記事の構成は下記目次の通りです。
はじめに:マルチ商法(連鎖販売取引)と後出しマルチの違い
まずはじめに、
「詐欺師および法律に向き合う際の考え方」をお伝えしたいと思ったのですが、
長くなってしまったため別記事にまとめました。
※是非こちらも読んでみてください。
本記事では、
私が潰した詐欺師が行政処分を受けた際、
実際に『主な不適正な取引行為』として挙げられたポイントを中心に、
法律の原文を引用し、
分かりやすく解説します。
※私なりに勉強しましたが、法律に関しては素人であるため、その点ご了承ください。
まず大前提として、
マルチ商法(連鎖販売取引)は合法です。
「信頼を売ってお金を得る」と悪名高いマルチ商法ですが、
『連鎖販売取引』として法律(特定商取引法:消費者の利益を守る法律)に定められており、
法律を全て遵守すれば合法なのです。
※以降、マルチ商法は『連鎖販売取引』に統一します。
一方、
私が潰した詐欺師は、
投資必勝法DVDを56万円で売る『訪問販売』と主張し商売を行っていましたが、
実体は紹介料10万円が発生する『連鎖販売取引』の性質を持ちました。
勧誘の際には紹介料10万円の存在は徹底的に隠し、
契約した後、
しかも「クーリングオフ期間が過ぎてから」、
紹介料10万円の存在が明かされる形でした。
これを、
通称『後出しマルチ』と呼んでいます。
その名の通り、
連鎖販売取引である事を後出しで明かすためです。
現在の特定商取引法では『後出しマルチ』の記載がなく、
グレーゾーンである商売です。
しかし、
記載がないからこそ、
法律に則っておらず、
問題点が多いことから、
今回のような行政処分が待ち受けていました。
実際にどういう行為が問題であったか、
その違法性について解説します。
後出しマルチの違法性 4点
それでは、
解説をはじめます。
今回の行政処分においては、
組織が主張する「訪問販売である」という主張を受け入れ、
まずは特定商取引法の『訪問販売』の項目で遵守できていない下記3項目が問題として挙げられました。
・勧誘目的等不明示(第3条)
・重要事項不告知(第7条第二号)
・適合性原則違反(第7条第四号省令第7条第三号)
さらに、
特定商取引法とは別に、
東京都消費生活条例施行規則でも1項目が問題として挙げられました。
・要請のない借入強要(条例第25条第一項第四号規則第7条七号)
それぞれの項目について、
順番に解説します。
「知らなかった」では済みません
勧誘目的等不明示(第3条)
原文
「販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない。」
勧誘に先立ち、電話でのアポイントの際、
「投資必勝法DVDを売る目的であること」を明らかにしていなかったことが問題となります。
今回の事例では、
勧誘マニュアルが存在し、
『意図的に目的を告げないこと』についてもマニュアルに記載していました。
勧誘の際にターゲットを騙して呼び出していたことが、
ターゲット(消費者)にとって不利となるため、
法律的にも問題となります。
重要事項不告知(第7条第二号)
原文
「訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの(第六条第一項第一号から第五号までに掲げるものを除く。)につき、故意に事実を告げないこと。」
日経225先物取引は高いリスクがあり、
証券口座開設時にも、
リスクに関して十分に把握することが条件となります。
勧誘の際、
重要な事項である口座開設条件について故意に告げていなかったことが問題となります。
勧誘時には『年数十%の利回りが得られる投資運用実績(パフォーマンス表)』を提示し、
被害者の目に『投資必勝法』と映るよう惑わし、
重要なリスクについての説明は意図的に行なっておりませんでした。
適合性原則違反(第7条第四号省令第7条第三号)
原文
「正当な理由がないのに訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約であつて日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品若しくは特定権利(第二条第四項第一号に掲げるものに限る。)の売買契約又は日常生活において通常必要とされる回数、期間若しくは分量を著しく超えて役務の提供を受ける役務提供契約の締結について勧誘することその他顧客の財産の状況に照らし不適当と認められる行為として主務省令で定めるもの」
学生ローンで借り入れなければ56万円の本件商品(投資必勝法DVD)を購入できない学生等に対し、
財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行っていたことが問題となります。
要請のない借入強要(条例第25条第一項第四号規則第7条七号)
原文
「商品又はサービスの取引に係る資金に関して、消費者からの要請がないにもかかわらず、貸金業者等からの借入れその他の信用の供与を受けることを勧めて、執ように契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること。」
本件商品を購入するための56万円の資金がないと伝えた学生等に対し、
学生ローンなどの貸金業者からの借入れを勧めていました。
さらに内部者が貸金業者へ同行したうえ、
借入れに際しては年収・職業等について虚偽の申告をさせ、
契約を締結させていたことが問題となります。
利用用途に関しても、
海外留学や資格取得などと嘘をつかせて借入れをさせていました。
そもそも、
なぜこのような悪質な学生ローン会社が野放しにされているのでしょうか?
詐欺師と一緒に処分を受けるべきだったと、
私は考えています。
まとめ:後出しマルチは『訪問販売』or『連鎖販売取引』のどちらに転んでもアウト!
以上、
『後出しマルチの違法性』について解説してきました。
まとめです。
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・はじめに:マルチ商法(連鎖販売取引)と後出しマルチの違い
→現在の特定商取引法では『後出しマルチ』の記載がなく、グレーゾーン
・勧誘目的等不明示(第3条)
→勧誘に先立ち、電話でのアポイントの際、「投資必勝法DVDを売る目的であること」を明らかにしていなかったことが問題
・重要事項不告知(第7条第二号)
→勧誘の際、重要な事項である口座開設条件について故意に告げていなかったことが問題
・適合性原則違反(第7条第四号省令第7条第三号)
→学生ローンで借り入れなければ、56万円の本件商品(投資必勝法DVD)を購入できない学生等に対し、財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行っていたことが問題
・要請のない借入強要(条例第25条第一項第四号規則第7条七号)
→借入れに際しては年収・職業等について虚偽の申告をさせ、契約を締結させていたことが問題
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今回の行政処分においては、
悪徳業者の商売を『訪問販売』とみなして処分を受けました。
一方、
『連鎖販売取引』とみなして考えてみても、
前述の4項目は各法律で規制されているため、
同じく問題となります。
さらに追加で、
『連鎖販売取引における書面の交付』を行っておらず、
こちらは完全にアウトとなるため、
より違法性が高くなると考えられます。
つまり、
後出しマルチは、
『訪問販売』or『連鎖販売取引』のどちらに転んでも、
アウトなのです。
頭の悪い詐欺師たちは、
「法律に記載がないから自由だ」と誤った解釈をしがちのようですが、
どっちつかずの間抜けなことをしては、
このような行政処分が待ち受けています。
また、
勧誘時に見せていた投資必勝法DVDの投資運用実績(パフォーマンス表)の数字に偽りがあれば、特定商取引法の『不実告知(嘘のことを伝えること)』にも該当する可能性が高いでしょう。
これは、
嘘であることを『確認できていないだけ』で、
ギャンブル性の高い短期トレードにおいて、
必勝法などありえません。
※非常に重大な問題であったと私は考えています。
その他、
しつこい勧誘や、
『限定200』という嘘の希少性など、
細かい問題点は山積みです。
以上のことから、
『後出しマルチ』のようなグレーゾーンの商売は、
長く続かないということは明らかでしょう。
皆様も引っかからないよう、
気をつけて下さい。
間違っても、
グレーゾーンの怪しい商売に手を染めないように。
マルチ商法従事者の方は、
特定商取引法の『連鎖販売取引』の項を熟読し、
しっかり法律遵守できているか確認してみて下さい。
もし違法性があれば、
今すぐに足を洗うべきかもしれません。
解説3:悪徳業者に騙されないためにつけておくべき知識・考え方 へ続く
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